三相ブラシレスモータを回す + VVVFってどんな感じ
電車の電動機の制御方式に、VVVFインバ-タ制御というものがある。
Variable Voltage Variable Frequencyの頭文字からこう呼ばれるそうだ。
直訳すると 可変電圧可変周波数制御 となる。
端的に言うと、直流電源を細かいパルス状に制御し、そのパルス幅で擬似三相交流を生み出して三相ブラシレスモータを回す、という事・・・らしい。
とても面白い制御方法なので、これを実際にやってみたい・・・
と思い立ち、「とりあえず三相ブラシレスモータを回すだけまわしてみたよ」というのが今回のコラム。
VVVFについては後半に付属。
コメントより2014/9/30追記しました。
コメントより2015/9/30追記しました。
近日中にVVVF的なことを行った話について新記事立てる予定です。
VVVFはプログラム面が難しいので、まずは三相ブラシレスを回せる回路を組んでみる・・・
買ったのは飛行機ラジコン用の12V、6Aくらいで回るモータ
はい、ドーンッ
MOSFETのPチャネル(以下P型)とNチャネル(以下N型)を組み合わせた回路です。
Hブリッジ回路を拡張したようなイメージ。
A,B,Cが三相ブラシレスモータへと繋がり、
a,b,c,-a,-b,-cがそれぞれ制御信号となります。
モータは数Aも流さないと動かない。てことは大電流を制御しないといけない訳だが、そうなるとトランジスタでなくMOS-FETを使った方が安心でしょうね。
電源側(ハイサイド)は三つのP型で組まれています。
というのも、N型はソース(回路ではGND側)の電圧よりある程度高い電圧をゲート(信号線)にかけると動作します。もし回路のハイサイドにN型を使った場合、ソース(モータ端子)が一定の電圧ではないため、状況によっては電源より高い電圧をかけないと動作しなくなります。
さて、P型はN型とは逆で、ソース(回路では電源側)の電圧よりある程度低い電圧をゲート(信号線)に掛けることで動作します。なので、P型はゲートをプルアップで電源電圧に保ちつつ、動作させるときはN型を使ってゲートをGNDに落とします。このN型はプルダウンで制御します。
接地側(ローサイド)は三つのN型をプルダウンで制御します。
ダイオードは逆起電力防止のつもりだけど、MOSFETに元から付いてるらしい。
といった具合。この文章じゃその道のプロには怒られそうな気もするが・・・
ブレッド板に組んでみた回路はこの通り
制御はどうするのかというと、こんな具合。
時間|1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6|
A|+a|H H L L L H|ハイサイド
|-a|L L H H H L|ローサイド
B|+b|L H H H L L|
|-b|H L L L H H|
C|+c|L L L H H H|
|-c|H H H L L L|
HがON、LがOFF。ハイサイドのHIGH・LOWがそのままモータのプラス・マイナスとなります。
A,B,Cそれぞれが規則的に変化しているのがわかるかと思います。三相モータは面白い動作ですよね。
ザックリした制御ですが、これをPWM制御にして擬似正弦波にすればVVVFの原理になる訳です。
いつもより多く回っております。
最初の低回転時は脱調しているらしく、回転数の上昇中に乱れてますよね。
発熱にヒヤヒヤしてましたが、MOS-FETは数アンペア流してもあまり熱持ちません。さすがです。
傍から見れば、PWMで普通のDCモータ制御したらいいじゃんって思うかもしれませんが、三相には三相の魅力というか、夢が詰まっているのです・・・
一応、利点としては脱調しない程度の負荷であれば回転数が保持できることですね。
ザックリ制御で三相ブラシレスモータは回ったが、しかしできればVVVFに近い制御をしてみたい。
VVVFについて考えてたけど、こんな感じらしい
三角波と正弦波(sin波)の交点の間隔でスイッチング(PWM)をすることで、交流を作り出す。
正弦波の周波数を上げるとモータの回転速度が上昇する。そして三角波で素子のスイッチング速度を変える。
三角波の周波数を一定にすると非同期モード、正弦波の周波数に比例させると同期モードとなる・・・らしい。
で、同期モードで回転数を上げていくと三角波も圧縮されて非常に細かくなる。すると、そのうち素子のスイッチング速度を超えてしまうため、ある程度で正弦波の一周期における三角波数(パルス数)を減らすのだそうだ。これが電車の発車時に聞こえる車のギアチェンジのような音の正体らしい。
図の正弦波の一周期を2πとすると、図と同じ波が二つ 2π/3 と 4π/3 ズレて三相交流を成している訳です。
イメージとしては
なるほどね、正弦波とパルスをズラして配置し、それぞれ三角波と比較してオン/オフを決めれば良い。
正弦波はsin(θ)を使えば良いのですが、さて問題は三角波・・・
for文とif文で毎回足して引くという古典的な方法もあるのですが、出来ればθに関連付けたい・・・
とすると・・・・・・・・・・ぉ?
フーリエ級数展開!?
あばばばばばばばばbbbb・・・・・
参考:フーリエ級数展開
お後が宜しい様で^^;
追記 2014/9/30 (コメントに気付くのが遅れました…)
前述した回路図を、一相分 (例えばB相) だけ抜き出して記載します。他の相も構成は同じです。
この一相分の回路で使用した主な部品は以下の通り
・K2232 二個
・J380 一個
・10kΩ抵抗 三個
秋月電子などで揃うと思います。また性能が近い類似の部品でも問題ないと思います。
実際には三相分の回路を作るので、それぞれこの3倍の個数が必要です。
逆起電力対策のダイオードは付けた方が安全かもしれません。
今回は3Aでクリップしてますが、大電流を流す場合は部品選定を慎重にしたほうが良いです。
この回路の信号入力による動作は以下の通り
・図左側の信号入力端子だけをHIGHにすると、モータ出力端子とモータ駆動電源が通電。
・もう一方の信号入力端子だけをHIGHにすると、モータ出力端子とGNDが通電。
・両方の入力端子をHIGHにすると、モータ駆動電源とGNDがショート。つまり禁止行為。
動作原理は次の三点を理解していただけると、ザックリと把握できるかと思います。
・N型MOSFETはソースよりゲートの電圧が高い場合にドレイン-ソース間が通電
・P型MOSFETはソースよりゲートの電圧が低い場合にドレイン-ソース間が通電
・プルアップ抵抗・プルダウン抵抗について →リンク
追記 2015/10/1
三相交流インバータのイメージGIF図を作ってました。これは海外の電気回路シミュレータで作ったものです。
ここ → http://www.falstad.com/circuit/circuitjs.html
左側の50Hz、500Hzはそれぞれ、上の方で説明した正弦波、三角波の源(ソース)になります。その二つのソースから正三角形のコンパレータ(比較器)で比較し、デジタルな量に変換しています。実際に(遊びレベルの)インバータを作る上では、通常はここまでをマイコン内で計算して出力することになるかと思います。
+5V、-5Vがそれぞれ、上述したモータ駆動電源、GNDとなります。つまりコンパレータから先はP型MOSFETとN型MOSFETに接続されているわけです。
結果として、右下の三相モータ(図では抵抗を挟んでますが)に擬似的に三相交流を供給することになります。