近頃の Google Earth と Sketchup 3Dギャラリー の今後に関するお話 (他 ビルディングメーカー)
バージョン 7.1 が公開され、また、3D表示することができる都市がより増えました。
Google Earthは日々進歩していますね。
しかし最近の動向について気になる点が出てきました。
結論から言えば、
Googleは 「Google Earth」から「Sketchup & 3Dギャラリー」を大方切り離そう としているようです。
いやまぁ、うすうす勘づいてはいましたが、ついに来たかといった感じですね。
いや、もう既に切り離されているように思いますが。
…ところで、私が3Dモデルを作り始めた頃のGoogle Earthはどんな風だっただろうか
上は今から5年前、2008年4月ごろの東京・六本木付近。
ちなみに上空の雲のようなものは私が加工したもので本来は存在しない。
なお、一番最初にGoogle Earthに触れた時はまだ日本語ではなかった覚えがある。
日本語版のSketchupが出た頃で、Google Earthの3Dモデルなんてものは日本ではまだ珍しかった。3Dギャラリーでは世界各地の様々な有名建築物のモデルが競うように投稿され、3Dモデルは加速度的に増加していった。Google Earthの建物はユーザーが主体となって街づくりをしていた。
そんな流れが変わり始めたのは2009年後半。マイクロソフトのVirtual Earth(バーチャルアース)がGoogle Earthを追い上げようと大都市を中心に航空測量で高品質な3Dモデルを大規模に作るようになったのを受け、Googleも対抗するように航空測量で大都市を中心に3D化するようになった。
それで生まれたのが今の東京のような、自動生成した個別の建物を配置するタイプの"初期型"3D都市だ。
これは建物が個別に配置されているため、Sketchupの3Dモデルに置き換えることが可能だ。
このGoogleの対抗措置は強力で、あっという間に世界の大都市を網羅してしまった。なお、Virtual Earthは現在廃止されているようだ。少なくとも最近は情報が来ていない。
この大規模な3Dモデル追加の際、東京にあったユーザーによる3Dモデルの多くが置き換えられた。とはいっても、見るに耐えないような低品質なモデルが淘汰されたといった感じだろうか。まぁ、多くの都市圏のユーザーが新たに3Dモデルを作る必要性を感じなくなったのは間違いないだろう。
そしてその数ヵ月後、2009年の終わり頃にリリースされたのが「ビルディングメーカー」だ。こいつはSketchupを使わなくとも、そして建物の写真を撮らなくとも、Googleの用意した航空写真とWebツールで3Dモデルを作成できる。この主な画像提供地は大都市とその近郊(大宮など)だった。
私は面倒なので使う事はなかったが、かなり手軽に作成する事ができる。ただ、自分としては、ビルディングメーカーのモデルはSketchup製に比べて品質が低く、かつ手軽に作成出来たため、3Dギャラリーの新着モデルの全体的な質が低下していたのが気に入らなかった。
なお、ビルディングメーカーは2013年の5月いっぱいでサービスを廃止する予定である。
(参照:A second spring of cleaning )
この頃は、まだSketchupで上質なモデルを作れば大都市でも登録されていた。
それから2年経った2012年5月、Sketchup事業がTrimbleへ売却された。3Dギャラリーも同時にTrimbleへ売却され、Googleはあくまで機能の提供のみに徹するようになる。
(参照:Sketchup事業のTrimbleへの売却の話)
いやいや、これはまだ始まりに過ぎない。
この半月後の6月6日、Googleは、『Google Earth を刷新する』と発表し、自社の画像処理で人口3億人分もの世界の都市を3D化していくと宣言した。また、3D都市化のプロセスに関するこんな動画も作成された。
Googleがこういった3D都市化を急いだのは恐らく、スマートフォンの爆発的な普及と、それに伴うアップル社の跳躍に危機感を持ったからだと考えられる。というのも、Googleがこの発表をした、そのわずか6日後の12日、Apple社は「AppleはiOSで独自の地図サービスを提供する」と発表、Google Earth を凌ぐ高品質な3D都市を披露した。つまり、Google 対 Appleによるスマートフォン界隈での激しい地図アプリ開発競争が行われており、Google Earth はその3D部門を担う攻め駒となっている訳だ。
(参照:Goodbye To Google Maps With Street View, Hello To Apple’s New Maps With 3D Flyovers)
(参照:「Google マップ」「Google Earth」を刷新へ - 3D地図がアップルとの一大争点に)
Googleの発表から約5ヵ月後の10月31日(米時間)、Google Earth 7.0 が発表され、それに伴い世界約20都市もの"新型"3D都市を発表。6月の宣言通り怒涛の勢いで3D都市化が広がっている。
(参照: Explore the world with tour guide and 3D imagery in Google Earth 7)
[補足] 初期型3D都市 と 新型3D都市 の違い
NYの同じ地点で比較図を作りました。左が初期型3D都市+個人モデル。右が新型3D都市。
しかし人間の目線に立ってみると優劣は逆転します。
分かる人には分かるイメージとして、左がベクタグラフィックス、右がラスタグラフィックスのようなものです。
[以上、補足終]
さて、今に至るまでの一通り Google Earth の変遷を見てきたが、なんだかまるでアイドル下積み時代を経てトップへ上り詰める一歩手前、といった感じだ・・・・・・すまないなんでもない。
この"新型"3D都市というのが、Sketchup や3DギャラリーとGoogle Earth を大方切り離す決定的なものだと思う。というのも、この新型3D都市は都市を丸ごと、建物や樹木や道路や直下の地形も全て含めて丸ごと3D化するものである。つまり、Sketchupで3Dモデルを作ったとしても"新型"3D都市の建物に代わって追加されることはない。これからメインとなるであろう"新型"3D都市内に3Dギャラリーのモデルを追加する事はできない。
一応、Google Earthのオプションの[地形]で「3D画像を使用する(従来の3Dモデルを無効にする)」のチェックを外せば今までの個人ユーザによる3Dモデルを閲覧する事ができるが、デフォルトでチェックが入るようになっている事から都市部における旧来の3DデータはGoogleにとって重荷になっていると考える事ができる。
つまり、Sketchupや3Dギャラリーの大都市における3D建物モデルは既にお払い箱という訳だ。
もちろん、都市部以外の観光地における個人ユーザの3D建物モデルは今後も重宝するとは思われる。結局、航空写真による画像処理は超高層ビルが林立する大都市で威力を発揮しますから、範囲の狭い観光地の3D化は苦手の筈だ。だから"新型"3D都市のない地域は未だ3Dギャラリーの3D建物モデルがメインである。
これらの事から、Googleは今後Sketchupや3Dギャラリーと次第に距離を置いていくと推測する。そしてもしそうなったとして、果たしてGoogle Earth という中心的存在を失ったSketchupや3Dギャラリーがやっていけるかどうか、それが一番の懸念である。
ここで冒頭に回帰し、
Googleは「Google Earth」から「Sketchup & 3Dギャラリー」を大方切り離そうとしている
p.s.
実はこの記事は上記の結論を書くことが目的ではなく、Sketchupや3Dギャラリーがどのように歩んだかを記録する事が目的です。このブログはどちらかというと自分へのメモ帳なんです。
2013/8/20 追記
3D Modeling Pipeline for Google Earth will be retired October 1, 2013.
というわけで、ついに終わりを迎えます…
10月までに投降した建物は更新されるまで残るという話です。
http://sketchup.google.com/3dwarehouse/?hl=ja